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機動戦士ガンダムSEEDMEMORY

機動戦士ガンダムSEEDMEMORY

STARG55 誓いの瞳

グラディウスは再び基地へと戻る。それと同時にザフト軍は撤退した。ただ、ユミとカズマだけを残して。エターナルメモリーガンダムはこちらに向かってきたエレヴァールガンダムをヴァントプロミスガンダムはクロスウィザードガンダムを回収した。リンとフォーンは回収後、格納庫に収めると、リンと共に先に降り立つ。ゆっくり降りてきたのはカズマとユミだった、その行動に不可解な部分を持ちながらもリンはヘルメットを取り、歩み寄る。カズマは相変わらずそっぽを向いたままだが、ユミはフォーンとリンを交互に見ると微笑む。リンは言いづらい雰囲気を察したか問いのような言い方をしながら尋ねる。

「どうかしたの?こんなところに」

「あ・・・ううん・・その・・・」

ディルノはその様子を横で見ていた。リアナは微笑むとディルノを見る、ディルノはそのリアナの表情を見てどことなく察知する。リンがなんで言わないかも分かる、その性格は優しすぎて逆に相手を楽にさせる。
どこかの軍兵のように、怒鳴って聞いたりしなければ銃で脅して聞いたりはしない。そこがリンのいいとこだ、最近になって人に問いかけて答えを見つけ出し、ほめる、それがリンのやり方になってきた。

「・・・・」

カズマはそっぽを向いたまま話す気はなかった。ディルノはその場を軽くさせるため多少の問いのような答えを語る。

「ここは共に戦う人のみが集まる場所、だぞ」

その微笑んでいる様子から軽いノリだというのが分かる。しかし、ユミもこう元は敵の人に囲まれると話しづらい・・そんな感じで俯いてしまった。さすがにリンもその様子には困り、仕方なく自分から出すことにした。

「もしかして・・一緒に戦いたい・・の?」

その演技の上手さには多くのものが尊敬するものがある。リンのはたから見れば困った顔は普通の女の子には『可愛い』と称されるもの。
前にもフォーンとデート(本人はそう思ったが否定された)に行ったが本人は気づかなかったが実際多くの女の子が目をつけていた。しかし、リンがもつ穏やかな表情と話し方が女の子たちからは『成長した大人』という感じを漂わせなかなか話すことができなかったりした。それを感じ取れたユミは胸をドキッとさせながら少し震えた声で答えた。

「あ・・・い・・・あ・・・は・・はい・・・」

途切れ途切れの言葉はなぜかフォーンは少しムッとなる感じだった。アージェンのことも実は知っていた(ファーストキスはリンとだったのでアージェンとのキスはセカンドキスとなるというのは余談)。それでも、リンが好きだった、リンも自分を好きだと思っているのだが・・どうしても実感できない。
リンの性格を知っていてのことだったが・・なんだか、微妙な感情になる。
リンはそんな気持ちも露知らずにユミに近づく、カズマはその様子を横で見ていて余計に不機嫌になっていた。

「嬉しいけど・・ザフトは大丈夫なの?」

「あ・・いえ!これは私たち個人の意思で・・・ザフトは関係ありません!あ・・でも・・戦いが終わったらまた・・ザフトに戻りますが・・」

「それならいいんだけど・・君たちの力、かなり大きいから僕は期待しているよ」

リンが好意など抱いてるわけでもないのに、フォーンはその差し出されていた手を見て、握り合うのを見たくはなかった。リアナはその様子を見て、リンのお人よしさが分かる、さらにはフォーンの束縛したい、という気持ちも多少は分かった。でも、気持ちは複雑だったりした。

「うん、で・・修理のほうは・・どうすればいい?」

「あ・・・そちらで・・お願いしたいんです。多少は修理したのですが・・まだまだ不十分な部分がありますから」

「分かった、で・・あと・・正式な挨拶がまだだったね、僕は知ってるようにリン・アーカー、それで、彼女は知ってのとおりフォーン・マラーテ。
それでもって・・そこにいる、二人」

リンが手を向けたほうにいたのはディルノとリアナ、カズマはその顔を見、自分が以前戦っていた、ヴァインセイバーガンダムとプライドシュライドガンダムのパイロットなのだと分かる。

「俺がディルノ・シバ。彼女がリアナ・クラシスだ、互いにヴァインセイバー、プライドに搭乗している。よろしくたのむよ」

その一言と同時にリアナがお辞儀をする。それを見て、ユミもお辞儀をする。次にリンが手を向けたのはラグナとミリアだ。

「彼らはグラディウス艦長、ミリア・アクターさん、スパイラルのパイロットでありながら艦長も勤めるラグナ・ブリーチさん」

そのリンの言葉と同時にミリアは敬礼をする。それに対しラグナは腕を組んだままユミとカズマを見る。まずはミリアが最初に答える。

「グラディウス艦長、ミリア・アクターです。初めまして、ユミさん。よろしくお願いね」

その言葉に対し、ユミは「はい!」と答える。カズマは鼻でフンッというがユミに肘打ちをされ、顔を歪める。その平然とした姿にラグナは顔を引きつりながら笑う。その後にラグナも敬礼をし答える。

「私がラグナ・ブリーチだ。気軽にどうぞ、よろしく」

リンはナナミとヴァンを見ると微笑みながら紹介する。その口調は重くはなく、ユミはそのまだ幼い小男女が戦っているのが分かると驚く。

「女の子が僕の妹のナナミ・アーカー。で、その隣がヴァン・イーグル。二人ともパイロットとしての素質は十分だよ。二人ともMSに乗って一緒に戦ってくれている」

その言葉を聞くと、ナナミは少しは恥ずかしいか顔を俯かせる。ヴァンはその強気な性格もあるからか顔を上げていた。

「その・・よろしくです・・」

その可愛らしい様子からユミは抱きしめたくなる気持ちがした。それに、多少気になる部分があった、その感情を押し込めてリンに尋ねる。

「リン君の・・妹なの?」

「え?・・・・血は繋がってないけど・・兄妹だよ、それは変わりはない」

その言葉にユミは特に追求はしなかった。ユミのその性格はさっぱりとした部分もあるため不要だと思ったのだろう、リンとナナミはホッとする、いくらなんでも・・説明はきついと思えてたからだ。リンは最後にアージェンを見るとユミの視線をアージェンへと向かわせる。

「彼女がアージェン、オペレーターでもあり医療担当でもあるんだ」

ユミは頭を下げる、アージェンは戸惑いつつも頭を下げる。リンは辺りを見回すとユミが自分の目線より下にいるため、多少目線を下げならユミに説明する。

「軍の施設は基本的に使えるから安心して、機体の整備は怠らずに、あとは・・そうだね、整備班や医療班などの人たちの説明はのちほどするよ、今は・・体を休めてくれればいいよ」

「ええ・・・ありがとう、体を休める・・・っていうのはいい提案ね、私にも案があるわ」

その言葉にパイロットたちの視線が集まる、ユミは少したじたじになりつつも笑顔であるチケットを見せる。それは団体専用の温泉無料チケットだ。それを見て、フォーンは目を戸惑いながらも瞬きを何度も繰り返す、ナナミはヴァンの隣で「わぁ~」といいながら笑顔で綻んでいる。リアナもディルノの顔を見、目を輝かせていた。ただ、リンは微妙な顔をしている、多分、そこからの予想ではあるが、特訓でもしようと思っていたのだろう。

「これ、団体用チケットなんだけど・・今回はパイロットたちだけでというわけで・・行かない?仲良くなれるチャンスだし」

実際のところ目的はフォーンとゆっくり話がしたい、ということだった。
フォーンはというと文句はなかった、けど、切実な願いはひとつはあった、それはリンと共に今度こそはゆっくり話したい、ということだった。
別に人はいてもいい、しかし、リンと話がしたい、そんな考えだった。
リアナは、というと温泉というものにはあまり関わったことがないため興味深いということだ、ナナミは温泉好きなのでこれも理由は特にはない。
ディルノとラグナ、カズマ、ヴァンはというと、温泉ということ自体にさほど興味はないので無反応に近い、特にやることがないので付き合うという理由と愛する人に必要な育みというわけで行くという理由がもっともだった。

「・・うん、反対はないようだし・・温泉へGO!」

ユミはガッツポーズを作ると手を上げる。ミリアは手を叩くと注意を自分へと向ける、その手馴れた行動は艦長というだけでもある。みんなに笑顔でミリアは伝える。

「はいはい、話は決まったわね?今回はパイロットたちの休息というわけで整備班や医療班も大変だと思うけど・・手をうってちょうだい、もちろん、あとで休息は与えるわ」

その一言に整備班や医療班などは問題もなく、承諾する。こういうまとめ方は慣れているかすぐに収まる。リンはさすがだなぁと改めて感心しながらミリアを見る。最後に一言、ミリアが伝える。

「それでわ、解散よ。それぞれ、今は自分がしたいことをしてちょうだい、私に連絡をくれれば外出も許可するわ」

その一言と共に解散し、また面々はそれぞれの準備や作業のために行動をし始める、リンはその場でその様子を見、改めて仲の良さを知ると微笑む、リンは自分の袖が引っ張られるのが分かるとその位置を見る。そこにいたのはフォーン、少々困ったような顔をしている、困ったというよりは謝りの素顔だと思えた、推測で自分が特訓する時間を減らされたことに罪悪感を感じてるのだろうと思えた。

「・・・ごめんね、特訓の邪魔して・・」

「あ、いや・・別にいいんだ。たまにはゆっくりしないと――・・・ね。
ほら、早く準備しないと・・ユミさんに怒られるよ、二人とも久しぶりなんだし・・めったにこんなことはないんだ。損だよ」

リンはそう告げると同時に笑顔でフォーンを見た、フォーンは多少は戸惑いながらも同意した。最後にリンに「それじゃ」というと、宇宙独特の重力を使いその場を後にする。そのすぐあとに、ディルノとリアナが重力を上手く使い、リンのほうへとゆっくりと向かってきた、リンはそれを見つけると「ディルノ!リアナ!」と呼ぶ、ディルノの手を掴むと自分横へと引っ張る、リアナもディルノと同じようにその場で止まるように引っ張る。

「いいのか、話さないで」

「えっ?」

リンはその唐突な言葉に驚く、女の勘を持つリアナが伝えたのだろう、というのは分かったが、まさかこんな話が真っ先に出てくるとは思うにも思えなかった。想定の範囲外、というものだ。

「彼女も・・きっとお前と話したがってるはずだぞ」

その言葉と同時にリンはフォーン・・アージェンの顔が思い浮かばれる。
ディルノたちは知っていた、その状況を。
リンはフォーンが好き(もちろん、恋愛対象として)、しかし、アージェンも好き(こちらは恋愛対象かも定かじゃない)というわけで中途半端な気持ちだった。もちろん、はっきりしたいが傷つくということで・・はっきりするわけにはいかなかった、アージェンは「負けない」宣言をしたが・・リンはそれがとても心の奥底で残されていて離れることはなかった。

「・・・でも」

「お前の性格は分かってる、それでなお更だ。温泉にゆっくり体をつけて休み、考えたほうがいいぞ」

そういうと、同時にリアナとディルノはリンと離れる、その顔は笑顔で親友に向けられた唯一のメッセージだった。リンは戸惑いつつも手を振り、一度の別れを見せる、だが、途端、悩む・・はっきりしなければいけないのが・・多い。ミリアも辛いのに、なぜ、自分たちのみ行くように指名したか・・それは彼女なりの優しさだった。それに甘える自分・・・こんなかっこ悪いことはない。

「・・・・・恋・・・か」

リンはその恋で分かったことがひとつだけある、それは何気ないことでも重要なこと。そう『恋』というものだけは何が起こるかわからなく、甘くはないということだった・・。





『翼を持つ者たち』 歌詞:管理人

永遠(とわ)という戦いを終わらすため 守るべき力を今

刃へと変えて 過去を凌駕するその力を今・・・・・

巡り会い 誘(いざな)う その永遠(とわ)への道

新たな自由への翼を広げ 永遠という道を歩み続ける

平和と偽り 何も変わらない 明日という日常

悲しみと怒りと憎しみの連鎖が続く戦い

安息という眠りを探し 人は彷徨い続ける

永遠(とわ)という戦いを終わらすため 守るべき力を今

刃へと変えて 過去を凌駕するその力を今

想いへと変えて 戦いを終わらせる翼に・・・





リンたちは街へと私服で出かけると外においてあった外出ようのスポーツカー2台へと乗る。リンの私服姿、フォーンの私服姿は変わらない、ナナミも地球にいた頃と変わらず、ディルノは襟が横に長い白と青と黒が交わられた皮の服と下は青の長いズボンを吐いている。アクセサリーは鎖と鍵がかかったチェーンだ。リアナはというと、珍しくポニーテールで服は白のブカブカのセーターに、ディルノがプレゼントしたであろう黒のコートに縞々模様のマフラーで下は皮のスカートという格好だ。ラグナは大人らしい皮でできて白いふわふわの毛が襟足部分にあり、胸にはハートのアクセサリーが施された黒い皮のズボンを履いていたし、ヴァンはというと、全身を黒いコートで覆うという大層な服装だった、カズマとユミは『リン暗殺計画』の服装
(リンはそのことに関してはもう気にしてはいない)であったし、これといった要素も見えなかった、アオイの服装もカジュアル系でその美形の顔に似合う。リンが運転する黒いスポーツカーにリン、フォーン、ユミ、カズマ、アオイが乗り、ディルノが運転する青いスポーツカーにリアナ、ナナミ、ヴァン、ラグナが乗った。もちろん、これは状況を考えた配置でもあった。
それぞれの配置につくとリンのスポーツカーが先行しディルノのスポーツカーが後を追う形になる。その微妙な雰囲気をディルノとリアナは心配だった。その心配をよそに会話はない、その風に吹かれながら髪をなびかせラグナはディルノたちに聞く。

「・・・喧嘩でもしてるのかな?」

その質問に対してことがさらに悪化しないようディルノは必死に伝える、それは本当のことなんだが嘘のように聞こえてしまう。

「あ・・・いや・・その、喧嘩はしてないけど、ほら・・あいつらはそんなには仲良くありませんよね?だから、きまずいんですよ」

その言葉は嘘はない、というより見事な答えだ、だが、ディルノらしくない返事の仕方には変わりはない、ラグナは深くは追求はしない、だが、なんとなくジュンが可哀想に見えたのは変わりはなかった。だが、ここは彼に我慢してもらい、最終目標の温泉がある【リバースオブライン】に着く。この【リバースオブライン】は簡単に言えば店の名前で実際の名前は『幸福天国』という変な名前だ、ので、英語の名前へと変えたのだろうと思えた。
それとは別にリンたちはその入り口に驚いた、温泉といえば竹がイメージがあったが・・本当に竹が門を構えていた。その周りにも竹があるのは不思議には思わない、実際ここは山の中と言ってもよかったし、決して人気がないわけでもない、ただコロニーの中でこれだけのものがそろうとさすがに驚く、高級そうに見えて女性たちには人気でもあった、事前にリンは写真で確認していたが・・やはり、実物を見るとほぼが違う。
リンはみんなを見渡すと笑顔でみんなに伝える、さきほどの沈黙など嘘のように。

「それじゃ・・入ろうか」

その声と同時にリンたちは入っていく、そして、場所は移り入浴所へと変わる、リンとジュン、カズマとラグナ、ヴァンとディルノは腰に一枚だけタオルを巻く、というスタイルで温泉につかる・・外の景色が現われ、それはコロニーの内部だがなんだか気持ちのよい感じがした。リンのその表情を見てカズマはなぜか気分が悪くなる感じがした、その状況を見てディルノはため息をつく。ヴァンは普段聞けないことを思いっきりリンに聞いてみることにした。

「リン・・さん、あなた、銃の腕前なかなかですよね?どうまでしたらあれほど正確に撃てるのですか?」

「えっ?」

そのヴァンの一言と同時にディルノとカズマ、ラグナ、ジュンは興味を深く持つ。カズマは戦ったことがあるのでその興味は敵であっても十分あった。

「・・・そうだね・・・人それぞれに癖がある、だからその癖が直ればどれだけ銃が扱えない人でも上手くはなるし、当たるようにはなるよ」

「へぇ~・・・」

全員がその説明に感心する。ヴァンはあまりよくは分からなかったが用は癖がなくなれば当たるということで意味は把握した。カズマはついにその重たい口を開いた、その話の内容も質問でもあった。

「・・お前、誰が好きなんだ?」

その一言と同時にリンは湯船に突っ込む、しばらくし、リンが顔を上げたときリンの素顔は湯船で髪が濡れていてその男前(?)の顔が台無しだった。
リンは慌てながら再度確認するように言葉を繰り返す。

「な・・な・・な・・」

「だから、誰が好きなんだ、ってことだ」

その言葉にリンは顔を真っ赤にする、ディルノやジュンはいたずら心が芽生えたかにこやかな顔をしながらリンに追求するように尋ねる。

「そうだよ、リン、気になるよ~」

「ああ、アージェンが好きなのか、フォーンが好きなのか、はたまたユミが好きなのか、どうなんだ?」

その一言を聞くとリンは顔を真っ赤にしながら鼻につくくらいまで湯船につかる。どんどん顔が近づいていく、リンは観念したか顔を上げるとボソッとつぶやくような声で答える。

「・・・アージェンは・・・好きだし・・・フォーンも好き・・・けど・・ユミさんは・・友達としては・・好きだよ」

その一言を聞くとカズマはなぜか安心できた。その理由は分からない、でもなぜか安心できた。そのリンの返答と同時に向こう側の壁の先からフォーンたちの声が聞こえる。

(うわぁ~・・いい景色)

(着て良かったですね)

(ええ・・・そうね)

(さてさて、背中流しごっこしよう~!)

その声を聞くと同時にヴァン、リン、ディルノ、カズマの顔が真っ赤になる。それぞれ湯船につかる姿を見るとジュンとラグナはクスりと笑う。
それとは関係なしのようにフォーンたちは会話をする、フォーンの姿はその長い髪の毛をまとめるため、ユミと同じのポニーテールにしている、ナナミはその髪型を止めていたパッチを取りロングヘアーだ、アージェンはその髪型に似合うよう三つ網だった。それぞれの肌は綺麗でまさに美人、美少女の花畑とも言えた、もちろん、それぞれには想い人がいるだろうが。

(うわ~・・フォーンさん、いいなぁ・・綺麗だし、スタイルいいし・・)

(そ・・そんなことは・・・)

(あるわよ、私はずっと一緒だったけど、フォーンは私よりモテモテだし、スタイルいいじゃない?)

(ユ・・ユミッ!)

(ふふっ)

その会話にリン、ディルノ、カズマ、ヴァンはなんだかドキドキした。この先にいるとしたらそれは想い人だ、やはり、男だと言うのが分かる。
フォーンたちは湯船につかり手を上に伸ばす、それと同時に静かにため息をつく、それぞれの顔が和んでいてその温泉の気持ちよさが分かりやすかった、静かな雰囲気が漂う・・それと同時にふと思ったことをフォーンは口から零す。

「・・・こんな中、争いが始まってるとか・・信じられないわ」

「・・うん」

フォーンの言葉に対し、ユミが答える。その素顔にはさきほどまでの余裕はなかった、ただその争いの無意味さ・・それなどを考えた深刻な顔があった、やはり、外面ではゆっくりしても・・戦いが終わらなければ意味がない・・この心地よさもいつ今度は体験できるかも分からない、そう思えた。
その言葉を続くようにリンが語る・・・。

「僕たちは・・今、こうしてやってることが正しいとは思ってるけど・・違う人は・・これが間違ってるんだ」

その言葉にフォーンが続くように話す、それは聞こえてないのに交わされる互いの言葉。

「争いの連鎖はきっと・・続く」

「でも、僕たちの未来は僕らで得なきゃいけない」

「運命(さだめ)でもあり、未来への鍵でもあるから」

「だから、僕たちは止まるわけにはいかない」

「今、しなければいけないこと、それをしなければならないから」

その言葉に対し、みんなが笑顔でリン、フォーンを見る。その顔は仲間としての頼もしい決意、それはリンとフォーンを安心させる顔だった。
今、つかの間の安息を感じていた・・戦いが近づいてることを知りながらも・・・。








「・・・くっ・・!」

暗い部屋の中、その呻き声が発された後、目覚めた。いつもここから始まる・・しかし、いつ果てなく終わるのかも分からない、その先を男はいつも夢見ていた。ありえない、でもありえることだ、その時間は刻々と近づく。

「・・・ふふっ・・・決戦の日は近いようだな・・」

その言葉にはさきほどのうめき声とは別の恐ろしい感じが漂っていた、さきほどの辛い声は消え、いつもの冷静で尚且つ覇気のある声に変わる。その声と同時にピーッという音が部屋に鳴り響く、それに伴い、若い男の声が聞こえる。部下だろうとフォルテは思った。

「どうした?」

その一言の後に部下の言葉が続く、それは配慮していない、元気のある部下らしい声。

『ハッ!ついに中立共の居場所を発見!各MS部隊は発進可能、いつでも攻撃が可能とのことです』

「・・・・現在時間より、1時間後、突撃する。MSパイロットたちは整備を怠らぬな、と伝えといてくれ。この戦いを最後とする、全軍全力で当たれ、と」

『は・・はい!』

その言葉にフォルテはゆっくりとため息をつく、そして、その長い髪形の先に見えたのは一枚の写真・・それは以前二人が出会ったとき、部隊の中の一人がデータ参考のためにとった写真だ。夕日がリンの表情を暗く見せる・・だが、フォルテはその写真を見て微笑む。ゆっくりとベットに座ると写真を見ながらつぶやく。

「・・・お前があれほど大きくなったとは・・・母さんや父さんは喜んだろうな。お前も・・この兄と並ぶくらいまで成長した・・そして、強くもなった」

リンの顔が脳裏に過ぎる・・・きっと、リンは本気でぶつかる・・しかし、あの性格だ、お人よしな部分が多分身を滅ぼす。兄を最後に討てないであろう、そこが弱点でもあり、強さだ。

「・・弟は俺が倒す・・・」

その一言と同時に制服を着ると部屋を後にする。辿り着いたのは格納庫、そこでは最終チェックが行われその様子を見てフォルテは最終決戦の意気込みが分かる、遠くからコウ、エリア、レオが重力を使い向かってくる、その様子を見たフォルテは手を上げる。

「いよいよ・・最終決戦だな!」

「・・・ああ」

フォルテはコウ、エリア、レオの手を掴むと自分の周りに引き寄せる、そして、自分の後ろにあった『パラサイドガンダム』を見る。フェイズシフト装甲が発動していないため強そうなイメージはさほどない、しかし、その大きさはほかのMSを圧倒し恐ろしさを現す。

「正直、これと私のMSが壊されたら・・負けと思っている。もちろん、負ける気はない・・だが、万が一のことを考えてだ・・気は抜けないぞ。この戦いは私たちの手で決まると言ってもよい、頼むぞ、お前ら」

その一言同時に3人は頷く、そして、それぞれのコクピットへと向かうと中に入り、設定をしていく、コウは一言、エリアのみに伝える。

「・・・なぁ」

『・・・何?』

「・・・・ありがとうよ」

『・・・何言ってるの?私たちは仲・・・』

「そうじゃねぇ、お前・・俺の・・姉かも・・・しれねぇんだろ?」

『・・・・!』

「・・・お前がいなくなったとき・・どうしようもなく・・辛かった。寂しかった・・ただの仲間なのに」

それは偽りのない心から湧き出てくる言葉・・・それは仲間としてではなく姉としてての優しい言葉。

「だから・・必ず生きて帰ろう・・・それで今言った言葉を・・もう一度聞かせたい、そのときに・・・呼ばせてくれ」

その言葉にエリアは冷静に『ええ』と答える。だが、内心は嬉しかった・・涙が出てきそうなのも我慢した、自分が言おう言おうと長引かせていた言葉を弟から・・。その言葉をレオはただ聞いていた・・・聞かないようにしたが・・その姉弟の会話を、それが今、できることだと思ったからだ。
しかし、今は戦場、レオは回線を開き、コウとエリアに伝える。

『さて、そろそろ時刻だ、気を抜くなよ、そして、生きて帰るぞ、フォルテがあれほど俺たちを頼りにしている、その期待を裏切らないようにな』

「・・・・ああ」

そして、回線は切られた。それと同時に格納庫に戦闘配備の警告がなる、それはパイロットたちを急がし、最後の決戦へと向かわせる。

≪各MSに通達、これが最後の戦いである、気を抜かないように。そして、各パイロットは生き延び帰ってくること、以上!第一シークレット、『パラサイド』発進スタンバイ!≫

その言葉に引き続き、『パラサイドガンダム』は秘密シャッターへと運ばれる、それぞれがその地形に合わせ状況を変えていく。

≪秘密シャッター閉鎖!『パラサイドガンダム』インゲージに接続、各パワーポイント良好!進路クリア!≫

その一言一言に緊張が走る、だが、迷いや戸惑いはない、あるべき先は最終決戦の戦場へと向けられる、基地の天井が開き、出撃可能となる。

≪パラサイド!発進、可能です≫

「行けるわ!」

「ああ!」

「行くぞッ!」

最後のコウの言葉と同時にスラスターが最大になり、基地から飛び出す。部隊の後ろにつくと後を追うように飛ぶ、数は約、100・・・すべての機体を最後の戦場へと出す、最後にエターナルルインガンダムが秘密シャッターへと運ばれる。

≪最後に隊長機、エターナルルイン、発進完了です!≫

フォルテはその操縦桿に目をやる・・・本当に討てるか・・・?
そんな心配はなかった・・答えは一つ。

「・・・負けるわけにいかないさ、討つしかないのだからな。
 フォルテ、ルイン、出るぞ!」

エターナルルインガンダムは基地から飛び出すと部隊の後を追う、フェイズシフト装甲が発動し、色が変わると同時に実弾が無効化となる、地球連合軍はついに最終決戦の戦場へと向かった・・・。









その頃、グラディウス軍では最終決戦に向け、準備が行われていた。それぞれの想いは今、最後の決戦へと向けられる。その中でもリンは心が不安定だった、その理由が兄との戦いだ。

「・・・・・」

その手は早く動いている、OSを次々に確認し、設定などもいつもどおり・・だが、なぜか、行く気がなくなる。最終決戦なのに。

「・・・・・はぁ」

ため息が篭れる、それと同時にコクピットを空けていたため、ナナミが顔を出す、突然現われた妹の顔にリンはビックリする。

「うわああっ!」

「キャッ・・・!何・・・そんなに驚かなくても・・いいんじゃない?お兄ちゃん」

「・・ナナミか・・ビックリさせるなよ」

「・・・おにいちゃん、何か悩みある?」

「ない・・けど・・どうかしたの?」

「・・・いつものお兄ちゃんらしくない」

その妹からの言葉にリンは戸惑う、ナナミは勘がいい・・それは女の勘だからか・・・?リンは改めて自分の妹に多少の恐怖を覚える。

「・・・そうかもね、実際、兄を討つことになれば・・結構辛いんだ」

その一言にナナミは自分は入り込めない感じを察する。黙ってナナミはリンに抱きつくとそのまま時間が止まればいいのに、と願う。
リンは突然の出来事に頬を赤くする。

「ナ・・ナナミ・・・?」

ナナミはその大きい瞳でリンを見る、その目には妹じゃないもう個人としての意思が尊重されていた、自分の信じている・・尊敬している兄、リンの顔が映し出されていた。その顔はどんどん近づき、リンの唇に自分の唇を重ねる・・それは妹としてではない、一人の人としての願いの証。

「・・・・・」

「・・・・・」

互いに沈黙後、唇は離れる・・・ナナミは多少は赤い頬を見せたままリンに伝える、その言葉には妹としての想いが表れていた。

「私・・・お兄ちゃんを失いたくない、だから守る。お兄ちゃんも・・私を守って・・・?」

その言葉にリンは戸惑いながらもしっかりと頷く。ナナミはリンからゆっくり離れると、コクピットを後にする。だが、なぜか心が楽になった・・それは今、倒すべき兄に向けられていた。警報が鳴るとリンの表情が変わる、空中に浮いていたヘルメットを取ると装着し、コクピットを閉める。

≪コンディションレッド!コンディションレッド!各MSは発進準備を願います!≫

その言葉と同時にリンはついに最終決戦が幕を開けたことを感じ取る。
ディルノとリアナは抱き合い、しばらくし、身を離す、互いに見つめあい微笑み合うとそれぞれに一言を告げる。

「・・・お前は俺が守るから」

「・・・・生きて帰ってきて」

互いにもう一度深く抱き合うと別れ合い互いに出撃準備を迎える。
ユミとカズマは互いの機体に向かう、ユミは「カズマ!」と呼ぶとカズマはその言葉に反応し、振り返る。ユミの目は心配そうな目だった、二人の間の距離は決して許されない距離でもあった。

「・・・どうかしたか?」

「・・・生きて帰ってこよう」

「・・・フォーンとか言う奴のためか?誰のためだ?」

「・・・・私たちのために」

その言葉を聞くと、カズマは笑う、ユミは少しムッとする、だが、すぐにそれは吹き飛ぶ。カズマはガッツポーズをすると、エレヴァールガンダムのコクピットの中に入る。ユミは微笑むとその後に続いてクロスウィザードガンダムのコクピットの中へと搭乗した、ジュンはラグナとともに合図し、コクピットへと入り、ヴァンは最後までナナミに何も伝えられずコクピットの中へと入った。
最初に、エレヴァールガンダムが発進準備に入る。

≪発進シークレット!パワーポイント正常、進路クリア、エレヴァール発進どうぞ!≫

アージェンの声とともに、エレヴァールガンダムは出力を上昇させ、最期の決戦の地へと向ける。

「カズマ・セントリース・・・エレヴァール、発進する!」

一度回転し、光の翼を広げると運命の果てに向かう、その翼の色は紫色の綺麗な色だった。続いて、クロスウィザードガンダムが設置される。

≪発進シークレット!パワーポイント正常、進路クリア、クロスウィザード発進どうぞ!≫

「ユミ・レイヴァー・・・・ウィザード!出るわ!」

その声とともに基地から飛び出すとエレヴァールガンダムの後ろへと着く、それは共に歩んできたものとの最後の決戦への羽ばたきだった。

≪発進シークレット!パワーポイント正常、進路クリア、続いてアクアパレス、発進可能です!気をつけて≫

その言葉を聞くとジュンは敬礼を軽くする、そして、すぐさま無限に広がる宇宙に目を向ける。

「アオイ・ジュン、アクアパレス、行くぞ!」

アクアパレスガンダムは基地から飛び出すとフェイズシフト装甲が発動し、色が変わる。それはすべてを守るための盾となる、そのあとにブレイバーガンダムが発進準備が完了となる。

≪発進シークレット!パワーポイント正常、進路クリア、続いてブレイバー、発進可能です!死なないでください・・≫

「ヴァン・イーグル、ブレイバー出るよ!」

ブレイバーガンダムは基地から飛び出すとすぐに後を追う、その後にパーシフルガンダムが発進シークレスに入る。自分の目の前に広がる無限のような星、それをただ見ていた。もう一つ、想いが強くなる、兄を守るということを。


≪発進シークレット!パワーポイント正常、進路クリア、続いてパーシフル、発進可能です!リン君を・・お願い≫

「はい、ナナミ・アーカー、パーシフル、行きます!」

パーシフルガンダムは兄を尊敬するかのように、一回転すると目を光らせ後を追う。

≪続いて、スパイラル、発進、どうぞ!≫

「ラグナ・ブリーチ!スパイラル、出るぞ!」

≪続いて、プライド、発進完了です!≫

「リアナ・クラシス、プライド!発進するわ」

次々に飛んでいく、機体・・・それは最後の戦場へと向かう、ディルノはエターナルメモリーガンダムを見た・・彼が・・最後の切り札・・そのためにはリアナもリンを・・みんなをこの命で守る・・そう決めた。

≪続いて、ディルノ機、発進どうぞ!≫

「ディルノ・シバ、ヴァイン、発進する!」

ヴァインセイバーガンダムはヴァインセイバーガンダムはグラディウスから飛び出るとフェイズシフト装甲が発動し色が変わる、そして、二つの翼を広げるとプライドガンダムの横に着き、愛しき人を守る騎士となり、飛んでいく。最後に、ヴァントプロミスガンダム、エターナルメモリーガンダムが残される、フォーンはリンに通信を開く、リンはそれに気づき、フォーンを見る。

「・・・・リン君・・生きて・・帰ってこようね」

「・・・僕が君を守る、だから、安心して、行こう、未来へ!」

その言葉を伝えると接続が切れる、そして、画面が明るくなり、そのあとにレーダーが映し出される。そして、モニターの部分にデュランダルが見つめるのが分かった、それを見、フォーンは微笑む、そして、次々に安全レバーがはずれ、フェイズシフト装甲が発動する・・青と水色と黄色に分かれて、緑色の部分もバックに施され、透き通る、白いコクピットの部分も現れる。そして、スラスターが溜まっていくと、ゆっくりとレバーを押した。

≪フォーン機、発進どうぞ!ご無事に・・≫

「フォーン・マラーテ、プロミス、出ます!」

ヴァンドプロミスガンダムは一度態勢を低くすると、そのままフォーブルから飛び出す、最終戦場へと向かう。最後に、エターナルメモリーガンダムが発進シークレスへと入る。発進レバーに固定されると、リンは場所を戦場へと向ける、それは最後の力でもあった。

≪発進シークレット!パワーポイント正常、進路クリア、エターナルメモリー発進どうぞ・・・!戻ってきて・・必ず!≫

アージェンの願いをも背負い、リンはレバーを押す、スラスターが上昇し、飛び立てる状況にする、リンは足元のレバーを踏む。さらに目を宇宙へと向ける・・兄との決戦の地へと。

「リン・アーカー、エターナルメモリー、行きますッ!」

エターナルメモリーガンダムはフォーブルから飛び出すと一回転すると放射能が散り、赤き翼が広がる、それと同時に光の翼が現れ、それはまさに勝利の天使の姿で、街で見たときと同じ光景・・だが、今はさらに輝いていた。エターナルメモリーガンダムはその祈りと想いを受けつぎ、未来へと向かう・・・永遠の平和を目指し。




どんなときも 思い出してる 君の笑顔を

小さい頃に 遊んでいた 公園で また出会う

もう逃げたりしないから 

会えたときは 君に言うから 好きという言葉を

だから ずっと 待ってるから

あの滑り台の上で

そして 見つめよう あの綺麗な星を

優しく君と手が触れ合う その日を・・・




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